「介護」に参入、拡大 北陸の製造や建設業、競争さらに激化

2010年05月20日 北國新聞

 北陸の製造業や建設業で、介護、福祉ビジネスに参入し、事業を拡大する動きが広がってきた。立山システム研究所(富山市)は高齢者の安否確認サービスで四国に初進出し、建設関連業の山口グループ(同市)は来月、富山市内でデイサービスセンターの運営を始める。リーマン不況もあり、市場拡大が期待できる介護、福祉分野への異業種参入は増えており、競争は一段と激しくなりそうだ。
 立山システム研究所は、看護師や管理栄養士の有資格者が24時間体制で一人暮らしの高齢者らの安否確認などを行う事業を手掛けており、今回、新たに徳島県美馬市にコールセンターを設置した。

 本格参入した5年前は富山、新潟県内からスタートし、その後急速に事業を拡大。現在は30道府県、約80の自治体から受注を得て、契約者数は約2万5千人に達した。

 コールセンターは富山市とさいたま市に置いていたが、新設した徳島県美馬市のコールセンターを四国での事業展開の拠点と位置づけ、まずは同市の約400人を対象にサービスを始めた。

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 山口グループは6月上旬、富山市で小規模ディサービス施設「歩々笑(ほほえみ)」を開設する。現在は建設現場の足場工事が主力だが、今後も市場低迷が予想されることから、市場拡大が見込める介護分野に参入することにした。

 グループ会社で、公共事業向けプレハブハウスのレンタル事業を担う山口ハウステクノは、車いすやベッドなどの介護用品のレンタル事業を行う。介護用品は「歩々笑」でも活用する予定で、将来的には高齢者向けショートステイ事業への参入も検討する。

 朝日建設(富山市)も、高齢者介護施設に加え、車いすなど福祉用品のレンタル事業に参入することを検討中。自宅介護がしやすい住宅への改修ニーズを見込んでいる。

 石川県でも、調剤薬局などを経営する「ひろ」(金沢市)が昨年12月に高齢者専用賃貸住宅、今年1月にはデイサービスセンターを開設。本業の強みを生かして処方せん調剤の手配も行うなど、福祉と医療の連携サービスで需要を取り込んでいる。

 富山県の65歳以上の人口比率は昨年10月時点で25.9%と、県民の4人に1人の計算となる。県内人口が減少に転じてからも高齢者の実数は増え続けており、「介護、福祉は国内市場では数少ない成長分野」(県関係者)との見方が多い。

 実際、富山県建設業協会によると、福祉や農業、環境などの異業種に参入した会員企業は昨年度だけで10社程度ある。ただ、相次ぐ異業種参入で生き残り競争も厳しく、業界関係者からは「本業がしっかりしていないと、苦し紛れに参入しても成功に結びつかない」との声が強まっている。