孤独死防止へ住民主体の「見守り」活動広がる、自治体も後押し/神奈川

2010年05月03日 神奈川新聞

 孤独死の早期発見や単身高齢者らの安否確認を目的とした住民主体の「見守り」活動が、県内に広がっている。日々の近所付き合いの中で、新聞がポストにあふれていないかなどを気に掛け、異変のいち早いキャッチにつなげる試みだ。訪問介護などの公的サービスでは目が届きにくく、緊急対応に限界があるため、自治体もセーフティーネットの新たな形になると期待し、後押ししている。

 「定期的に入れている電話に、その日は出なかった」。4月上旬、川崎市宮前区野川でデイサービスなどを行う福祉ボランティアや民生委員ら約20人が参加して開かれた地域ネットワーク会議。80代女性の孤独死が報告された。

 応答がないことを不審に思った住民らが連絡を取り合い、女性宅に確認に出向くと、ポストに新聞がたまっていた。死後数日程度での発見だったという。

 会議を主宰するボランティアグループ「すずの会」の鈴木恵子代表は強調する。「日々の見守りと発見は地域の身近な関係の中でできる。解決まで住民が担うのは厳しいが、情報を共有すれば何らかの手だてを見いだせる」

 月1回の会議は、区や地域包括支援センターも参加。ケースによって公的サービスに委ねるなど、お年寄りが地域から孤立しないよう、さまざまな立場から目を向けている。

 横浜市保土ケ谷区の県営住宅・千丸台団地では、地区社会福祉協議会が住民から合鍵を預かり、異常に気付いた場合の通報や安否確認に役立てている。既に約180人が登録。室内で倒れたもののすぐに発見され、一命を取り留めた女性がいるなど、成果は大きいが、南出俊男会長は課題を挙げる。「外からの確認は限界がある。中からの発信も必要」。新たに市の助成でベランダに回転灯を付ける運動を始め、枕元などにあるスイッチを押せば、音と光で周囲に異常を知らせられるようにした。

 「さりげない見守り」を実践するのは、同市都筑区の市営住宅・勝田団地だ。自治会や民生委員らがネットワークをつくり、夜に照明が点いていない居室がないか目を配る。活動の趣旨を寸劇で紹介するなど、住民の理解と協力を得るための工夫も重ねる。

 このほか、横浜市戸塚区の大規模団地・ドリームハイツは、隣接する小学校の空き教室を無償で借り、「見守りネットセンター」を4月から本格的に運用。栄区の公田町団地は、住民が都市再生機構(UR)と協力し、住戸に設置したセンサーで居住者の異変をキャッチし、駆け付ける仕組みを近く構築予定だ。

 県によると、2005年に約22万6000世帯だった県内の高齢単身世帯は今後急増し、20年に42万6000世帯に達する見通し。現状でも、自宅でみとられないまま息を引き取るなどした単身高齢者は年間1500人前後(県警集計)に上っているが、県は「孤独死はさらに増える」とみており、10年度は新たに県営住宅で実態調査を開始。県警も不動産業界に対し、独居老人宅の異変に気付いたら通報するよう求めるなど対策に乗り出している。