孤独死防げ 団地を調査/神奈川
010年04月16日 朝日新聞
誰にもみとられずに亡くなる孤独死を防ぐため、県は4月から、県営団地で孤独死の実態調査に初めて乗り出した。モデルの県営団地の自治会などから事例を具体的に聞き取り、対策を考える。将来的には、県営団地全体での取り組みに広げる方針だ。
県によると、223の県営団地で2007年度60人、08年度61人、09年度54人の孤独死が確認された。県内で単身の高齢者世帯は、05年には22万6000世帯。10年に29万3000世帯、20年に42万6000世帯に増加するという。増加率は全国平均を上回る見込みで、孤独死の対策はますます必要となる。
これまでも団地を管理する県公共住宅課が、孤独死があった場合、「事故住宅」として入居者の募集を1年以上停止する必要があるため、孤独死の人数や発見の経緯を簡単にまとめていた。今後は公共住宅課と高齢福祉課が連携し、防止対策に主眼を置く。調査では孤独死があった2、3のモデル団地を選び、自治会や民生委員に、発見の経緯や亡くなった人の近所付き合いの様子、地元の対策などを聞き出す。モデルの団地で関係者の協議会を立ち上げ、来年度以降、見守り活動などの防止対策を実際に始めていくという。
(曽田幹東)
異常知らせる回転灯/民生委員に鍵預ける
横浜市では2008年度から、孤独死を防止するために「見守りネットワーク」を作る地域に助成している。県も横浜市の先進事例を参考に対策を練り上げるという。
例えば、横浜市保土ケ谷区の千丸台団地(1174戸)は、市の助成金を使って希望者宅のベランダに緑の回転灯を取り付けている。住人がスイッチを押すと、「ピー、ピー」という音とともに回転灯が回り、外から異常がわかる仕組みだ。
同団地は06年から居室の鍵を民生委員らに預けておく取り組みも始めた。利用者はすでに約170人に上る。
ただ孤独死をなくすことは簡単ではない。昨夏、入居して半年間が過ぎた50代の一人暮らしの男性が亡くなった。男性は週1回、ボランティアの団地住民から弁当を受け取っていた。男性が呼び鈴を押しても出てこないため、預かっていた鍵で住民らが室内に入ると、男性が倒れていたという。
南出俊男・千丸台地区社会福祉協議会長(77)は「『まだ自分は大丈夫』と思っている50、60代の人や、入居間もない人は、周囲との人間関係が薄く孤独になりやすい」と話す。南出さんは、きずなをより深めることが大事だと言い、「住民の自主的な取り組みだと、個人のプライバシーの問題との兼ね合いで難しい面もある。県が積極的に乗り出すのは良いこと」と、県の取り組みに期待した。