病院が高齢者「見守り」 TV電話で毎日問診 体重、血圧データ受信/福岡
2010年04月08日 西日本新聞
■福岡・筑紫南ケ丘病院 新サービス運用
慣れ親しんだ地域で暮らしたいが、見守ってくれる人がいないのは心配-。そんな高齢者の不安を解消してくれるような、見守りシステムの実用化が各地で進んでいる。福岡県大野城市の筑紫南ケ丘病院はテレビ電話とインターネットを組み合わせたサービス「在宅医住システム メディハウス」を今年4月に開始した。現状をリポートする。 (大矢和世)
「体調はいかがですか?」。情報端末のテレビ電話機能を通じて、看護師が住人に語りかける。1回につき約3分間。毎日、あらかじめ決めておいた時間に行う。
システムを導入した住宅には、タッチパネル式の端末のほか、体重や体脂肪率などを測る体組成計、血圧計などを設置する。計測された11項目のデータは毎日自動的に病院へ送られ、電子カルテとして蓄積される。看護師はそのカルテを参照して電話する。
診察や治療が必要と認められれば、通院や入院の手配をする。データの未送信や、事前の連絡なく電話がつながらないなどの異変があれば、自宅や家族へ連絡し、安否確認も行う。
対象は病院から車で約30分圏内にある地域で、延べ十数人がシステムを利用する。当面は、入会費1万円と5年分の会費2万円、月9800円の使用料で事業を進めていく。
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同病院は07年4月に訪問看護部門を立ち上げた。だが、訪問だけで患者の日常の健康状態をすべて把握するには限界があり、効率も悪い。「といって、毎日通院してもらうこともできない。通信を生かして日々の状態を把握できないかと考えていた」と事業責任者の前田俊輔統括部長は話す。
このため、同病院は建設業、訪問介護事業所と連携し、ソフトとハードの両面から高齢者の暮らしを支える「メディハウスプロジェクト」を立ち上げ。今回の見守りシステムの開発は昨年から取り組み、運用にこぎ着けた。「これからの病院は、患者に選ばれる時代。目先の医療報酬ではなく、地域の拠点病院として選んでもらうため、システムを構想した。できる限り自宅で安心して住んでもらい、この地域で医療難民が出ないことを目指したい」と前田さんは意欲を見せている。
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●電力使用確認や振動センサー 新システム実用化期待
高齢世帯の安否を遠隔から見守る次世代システムの開発が進んでいる。まだ実験段階だが、早期の実用化が期待されている。
東京都狛江市は電力中央研究所(東京都千代田区)と、電力の使用状況で高齢者を見守るシステムを共同開発。昨年10月から同市内に住む65歳から80歳までの一人暮らし11人の住まいに設置し、運用方法などを検討している。
基本は配電盤の配線に取り付けるコイルとデータを送信する簡易型携帯電話(PHS)。1分ごとに蓄積されたデータから分析した家電製品などの使用状況がグラフ化される。通常は青い線で表示され、48時間以上変化がない場合は赤い線に変わる。市介護支援課が朝夕にグラフを確認。表示が赤に変わっていれば電話などで連絡を取る。
NTTコミュニケーションズなどは、室内のドアや玄関、冷蔵庫など生活していると動くもの6-10カ所に振動センサーを設置する「みまもりアシスト(仮称)」を開発し、昨年12月から今年1月にかけて東京と千葉の高齢者宅で実験を行った。一定期間振動がないとコールセンターに通知されるだけでなく、システムに蓄積されたセンサーの情報を解析することで、体調不良などもキャッチしようという試みだ。開発プロジェクト部長の高杉英利さんは「カメラ以外は抵抗感も少なかった。ニーズさえあれば商品化は年内にも可能」と話す。