通報装置の利用減 花巻市が一人暮らし高齢者に貸与/岩手

2010年03月29日 岩手日報

 花巻市が一人暮らし高齢者世帯などに無償貸与する緊急通報装置の利用が近年、減少を続けている。体調の急変やけがなど一人暮らし生活の不安を和らげるのに有効とされる通報装置だが、高齢化に反し同市では最近3年間で利用者が70人余の減。
地域による見守り意識は高まっているとみられるものの、人手頼みには限界がある。周知不足という現状があり、事業の実施状況の分析が必要だ。

 緊急通報装置設置事業は、市が安全センター(本社東京)に事業委託して実施する。通報用電話機とペンダント型無線機をセットで貸与。利用者が体調不良などを訴えたい時、ペンダントまたは電話機のボタンを押すと24時間・365日、看護師らが常駐するセンターにつながり、電話機で会話ができる。

 市は65歳以上の一人暮らし高齢者(2122人=2月115日現在、市社会福祉協議会調べ)のほか、身体障害者だけの世帯の希望者らに貸し出し、2009年度(12月現在)は250人が利用。利用者は06年度に比べて72人減っている。

 市は利用減の要因を▽携帯電話で親族らと連絡できる▽地域の見守り体制・意識の向上-などと分析。一方で福祉関係者からは、心疾患などの持病が貸与条件という一般の認識や、「専門の人が24時間対応するシステムとは知らなかった」(民生委員)という指摘が聞かれる。
万一の際に現状を確認する協力員の確保も課題に挙がる。

 関係者によると、全国的には自治体の予算削減に伴い、利用条件が厳しくなるケースが増えているという。

 花巻市内では市社協が10年度、情報通信技術を活用した新たな安否確認モデル事業を独自に開始する予定。同市長寿福祉課の内舘桂課長は「通報装置は、優先順位は付くが(持病の有無に関係なく)ニーズがあれば貸し出す。さまざまな事業を組み合わせ、見守り体制の全体的な底上げが大切」としている。