孤独死なくせ、団地の住戸にセンサー導入へ/横浜

2010年03月27日 神奈川新聞

誰にもみとられずに息を引き取る「孤独死」をなくそうと、高齢の単身世帯が増えている横浜市栄区の公田町団地(1160戸)に2010年度から、住戸に取り付けたセンサーからの情報を基に、住民のNPO法人が安否確認するシステムが導入される。NPOは団地内の空き店舗を改装した見守り活動の拠点で居住者の状況を確認し、ドアの開閉やテレビの利用がないなどの「異変」があれば駆け付ける。都市再生機構(UR、本社・横浜市)の団地では全国初の試みで、2年間運用し効果を見極める。

URが実証実験として住戸に設置するのは、居住者が室内を移動すると反応する赤外線や超音波のセンサー、テレビのリモコンや照明スイッチの使用状況を自動検知する機器、ドアの開閉をキャッチするセンサー。6月から運用し、10年度は約80戸で試験的に実施。11年度に団地全体に広げる方向だ。

センサーからの情報を活用するのは、住民らが結成したNPO法人「お互いさまねっと公田町団地」。活動拠点で1日2回、センサーから無線で届く情報をモニターで確認する。反応がない住戸があれば警告画面が表示されるため、倒れて動けないといった危険な状況とみて電話を入れたり、民生委員と一緒に訪ねたりして安否を確認。必要に応じて警察や消防などに通報する。

玄関ドアにもセンサーを取り付け、外出で反応がない場合と異変とを区別できるようにするという。

実験に先駆けて26日に開所したNPOの活動拠点は、かつてコンビニが入っていた空き店舗を国の交付金約3000万円で改装した。お年寄りらが自由に集えるサロン、介護予防運動などを行えるスペース、調理場なども備え、日常的な相談や仲間づくりの場としてお年寄りの孤立を防ぎ、孤独死が起きにくい環境づくりも目指している。

同団地は、東海道新幹線が開業した1964年に入居が始まった。間取りは1DK~3Kと多世代が住むには狭く、若者が減少。単身や夫婦2人の高齢世帯が増え、住戸内で孤独死した女性が約4カ月後に発見されたこともあるという。

お互いさまねっとの理事長(79)は「痛ましい最期をなくし、安心して暮らせるようにしたい。住民同士のつながりを深めるきっかけにもなると思う」と取り組みの意義を強調。URは「ほかの団地に広めることも視野に、効果やコストを見極めたい」としている。