お年寄り安否情報発信 県立大などシステム普及へ/岩手
2010年02月24日 岩手日報
県立大(中村慶久学長)と県社会福祉協議会(菅三郎会長)などは、情報通信技術(ICT)を活用した高齢者の安否確認システムの構築と普及を進めている。お年寄りが自ら健康情報を発信し、それを基に地域全体で見守る仕組み。孤独死の増加が深刻化する中、地域や社会の状況に合わせた多様な体制を整備し、お年寄りを見守り、支える環境づくりを目指す。
「いわて“おげんき”みまもりシステム」と名付けた安否確認システムは、全国初の取り組み。2008年度に実験システムを構築し、09年度は県が国の「ユビキタスタウン構想推進事業」(地域情報通信技術利活用推進交付金)の助成約2000万円を受けて進めている。
同システムは、お年寄りが普段使っている電話機から1日1回電話し、自動音声に従って「1げんき」「2すこしげんき」「4ぐあいがわるい」「4はなしたい」のいずれかを選択、発信する。
民生委員や隣人、牛乳や宅配便を配達する民間事業者らの見守り協力者が気掛かりなことがあった場合は、携帯電話やファクスから情報を発信することができる。
各市町村社協が見守りセンターとなり、インターネットを活用して24時間に1回以上、お年寄り、協力者双方の発信状況を確認する。安否が確認されない場合は電話で確認。状況に応じ、地域の見守り協力者に直接の確認を依頼する。
同大社会福祉学部の小川晃子教授は同システムの特徴を「他人に迷惑をかけたくないという高齢者の遠慮感を考慮し、見守る側の『過度の見張り』を避けることができる。気付きを集約でき、確実で定期的な見守りになる」と説明する。
現在、川井村や盛岡市、久慈市などで約50人が利用する。今後、600人規模まで対応できるようシステムを増強。利用者の安否情報を見守り協力者や別居家族などへ転送する仕組みも構築もする。
昨年8月には県立大、県社協、青森県社協の3者がシステム共同研究の連携協定を締結した。県の枠を超えて実用化に向けた社会実験を展開し、地域社会の福祉向上を目指す。県社協地域福祉企画課の根田秋雄課長は「この試みによってより具体的な生活課題が見えてくる。新たな社会福祉事業として取り組んでいきたい」と話す。