孤独死防止 住民立つ 高蔵寺ニュータウン/愛知県春日井市

2009年11月29日 読売新聞

 多摩ニュータウン(東京都)、千里ニュータウン(大阪府)と並び、大型団地の草創期に造られた愛知県春日井市の高蔵寺ニュータウンで、入居者の孤独死が問題になっている。

 子育てを終えた世代の「横のつながり」が希薄になっていることが原因とみられ、住民らはNPO法人「高蔵寺ニュータウン再生市民会議」を設置し、1人暮らしの人の相談窓口を設置したり、交流スペースを作ったりして、孤独死防止に取り組み始めた。

 愛知県保険医協会から依頼を受けて調査している医師 田島正孝さん(67)によると、2005年から今年7月までに高蔵寺ニュータウンで見つかった変死者62人のうち4割の25人が孤独死だった。
 市内の他地区では3割弱で、ニュータウンでの孤独死が多いことが判明した。


発見まで平均21日

 自殺や他殺を除き、死後24時間以上経過してから発見された場合を孤独死としており、同ニュータウンの場合、発見されるまでの平均は21.3日だった。

 死因は心臓病が16人、脳出血が8人で、集合住宅が20人、一戸建てが5人。
田島さんは「付近の住民から『異臭がする』と警察に通報があり、ドアを開けると、男性が万年床やゴミの中で病死しているケースが多い」としており、平均年齢は60歳だった。

 疎遠になった家族が約8か月後に遺体を見つけたこともあった。


子の独立契機に

 同市は現在、1人暮らしの68歳以上に対し、民生委員が定期的に巡回しているが、田島さんは「子どもが独立すると、近所とのつながりがなくなってしまうケースが多い。1人暮らしの男性は持病があっても病院に行かない傾向があり、巡回対象を60歳以下にも下げるべきだ」と指摘する。

 こうした実態を受け、住民も動き始めた。

 今年4月、NPO法人になった高蔵寺ニュータウン再生市民会議は、これまでに2回、高齢者を対象に健康やリフォームなどの相談会を実施した。
今後は月1回、定期的に開催することにしている。


会員の巡回も計画

 また、団地内の商店街の空き店舗を「ふれあいサロン」にして、1人暮らしの人が気軽に立ち寄れるスペースにするため、家主と交渉を進めたり、55人の会員が定期的に1人暮らしの家を巡回する計画を検討している。

 同会議の曽田忠宏理事長は「完成時に入居した人たちが子育てを終え、退職する年齢になり、高齢化や独居化は今後、一気に進んでいく。多摩や千里では住民らが中心になって対策を取っており、高蔵寺でも対策を進めたい」と話す。

高蔵寺ニュータウン
住宅・都市整備公団(現・UR都市機構)が中心になって造成し、1968年から入居が始まった。ピーク時の95年4月には5万2200人が住んでいたが、10月1日現在は4万7700人。
60歳以上の高齢者は21%だが、ニュータウン内の一部地域では30%を超えている。