ご近所の力で孤独死防げ/東京・江東区
2009年04月23日 読売新聞
ご近所の力で高齢者の孤独死を防げ――。江東区は今年度から、一人暮らしの高齢者を見守る地域住民の拠点作りを財政支援する新事業を始めた。全世帯の8割をアパートやマンションが占める同区は一人暮らしの高齢者が増加中。区高齢事業課は「お年寄りの情報を地域で共有し、閉じこもりや孤独死を防ぎたい」としている。(稲村雄輝)
同課によると、一人暮らしの65歳以上の区民は2万5562人(1月現在)。ワンルームマンションの増加などで年1000人単位で増えている。2005年度の区内の孤独死は230人。多くが高齢者だった。
そこで区は、昨年度、「高齢者地域見守り支援事業」を始め、都営団地など3か所をモデル地域とし、見守り対象の高齢者の情報を地図に書き込む「支え合いマップ」などを作製した。
亀戸9丁目2号棟自治会が作ったマップでは、約200世帯の住民のうち、独居世帯や住民のたまり場に印をつけ、交流のある世帯同士を線で結んだ。「どの住民に聞けば、見守り対象者の情報を聞けるか、わかるようにした」(同課)。
今回の事業は、昨年度の事業を拡充し、住民一人一人に情報収集のアンテナを広げてもらうことにした。
事業では、一人暮らしの高齢者が住民から忘れられないよう、住民が情報交換できる交流の場作りを支援する。備品購入費や修繕費などの一部を助成することが柱。マンションなどから4か所のサポート地域を公募し、1か所につき20万円を支援する。集会所などを活用して拠点にしてもらい、モデル地域の活動事例を報告する発表会も開く。
昨年度のマップ作りを指導した「住民流福祉総合研究所」(埼玉県)の木原孝久所長は「集合住宅は住民同士の交流が希薄と思われがちだが、『最近、物音がしない』『新聞がたまっている』など、意外と細かく見ている」と指摘。「緊急時に誰を優先して助けるかなど、地域の防災計画にも役立てられる」と話す。