孤立死ゼロをめざす各省の取り組み -厚労省会議(1)

2007年09月01日 ケアマネジメントオンライン

 8月28日、厚労省は「第1回高齢者などが一人でも安心して暮らせるコミュニティづくり推進会議(「孤立死ゼロ」を目指して)」を開催した。推進会議の議員は任期を1年とし、年度内に提言をまとめることをめざす。

 単身高齢者や高齢者世帯のみの世帯が増加している中、都市部などで地域から孤立した状態の高齢者が死亡することが社会問題となっており、こうした世帯の数は今後も増加すると見込まれる。同会議は孤立死ゼロをめざし、各地域で実践されている特徴的な取り組みを全国に普及させるとともに、高齢者などが一人でも安心して暮らせるコミュニティづくりに向け、国民などに提言することをねらいとする。

 厚労省のほか、総務省、警察庁、国土交通省の協力を得て会議は運営される。


※以下は配布資料より抜粋、要約。


■厚労省老健局計画課から

孤立死防止事業「孤立死ゼロ・プロジェクト」の平成19年度の予算額は1億7千万円あまり。
基礎資料として、日本の高齢化の推移、都道府県別の高齢者数の増加率、認知症患者数の予測など、高齢者についてのデータが示された。

高齢者の生活実態に関する意識調査結果
2005(H17)年度に内閣府が行った調査では、高齢者の日常生活での心配ごとの内容として、一人暮らし世帯では以下のことをあげる回答者が目立った。

●自分が病気がちだったり介護を必要としている :34.9%
●頼れる人がいなく一人きりである :30.7%
●家事が大変である :18.0%
●外出時の転倒や事故 :20.4%
●自宅内での転倒や事故 :15.8%

同じように一人暮らし世帯の高齢者に将来の不安をたずねたところ、「頼れる人がいなくなること」と回答したのが17.5%。夫婦のみ世帯や一般世帯ではそれぞれ11.0%、10.0%だった。

高齢者の一人暮らし世帯は、人とのつきあいも乏しいケースが夫婦・一般世帯よりも目立つ。「お互いに訪問しあう人がいる」と回答した人も33.1%いる一方、「つきあいはない」と回答した人も11.2%と1割をこえている。

個人情報保護法について
2006(H18)年度、内閣府で個人情報保護に関する世論調査を行った結果では、「防災・防犯のためであれば必要最小限の範囲で個人情報を共有・活用してもよい」と回答する率が、60歳代以降はほかの年齢層よりも低く、「しない方がよい」とする率が1割近くあり、個人情報を防犯のために共有することにほかの世代よりも消極的であることが読み取れる。



■総務省から

総務省のコミュニティ施策について
コミュニティ研究会の立ち上げ
少子高齢化、過疎化などにより地域の共同体意識が脆弱化している。地域コミュニティを再生し、それが供給するセーフティネットの強化をはかることが高齢者支援などにとって必要。コミュニティは政務官のもとに開催し、有識者12名で構成。

コミュニティ研究会の議論の内容
●連携・協力の場の構築
●ICTの活用
●行政の関与のあり方
●地域コミュニティの教育活動・子育て
●地域の歴史・文化・景観など
●防犯・防災活動

今後の施策の展開
●地域コミュニティ活動の連携の場の構築支援
●都市・農山漁村の教育交流による地域活性化推進
●総務省の体制整備



■国土交通省住宅局から

孤立死防止のための取り組みの方向
A.外に出て活動しやすい環境
 →(1)住宅・共用部のバリアフリー化
  (2)店舗・施設および移動経路などのバリアフリー化

B.店舗や施設と住宅との近接性
 →(1)都心部での高齢者向け住宅の整備
  (2)住宅に近接した場所での施設などの立地誘導

C.帰属できるコミュニティ
 →(1)コミュニティ活動の拠点となる施設の整備
  (2)コミュニティを支える活動の活性化

D.万一に備えた見守り
 →(1)福祉施策との連携
  (2)緊急通報手段の確保
  (3)見守りなどの生活支援活動の活性化

孤立死防止に資する施策の一例
例:住宅・共用部のバリアフリー化の場合
①公共賃貸住宅団地のバリアフリー化
②民間賃貸住宅のバリアフリー化
(高齢者向け優良賃貸住宅)
③持ち家のバリアフリー化
(優良住宅取得支援制度、死亡時一括償還型の融資(※)、バリアフリー改修促進税制)
など
※死亡時一括償還型の融資 :
亡くなった後に家屋を売却して返還にあてる



■警察庁生活安全局から

高齢者保護などへの取り組み
昭和61年、警察庁において「長寿社会総合対策要綱」を制定。
急速に長寿社会へ移行しつつある社会の現状を踏まえ、高齢者の保護及び社会参加を中心とする総合的な長寿社会対策を推進し、国民の期待と信頼に応える。

主な実施項目
実態把握活動などの推進
●実態把握活動の推進
●関係機関、関係団体などとの連携の強化

高齢者の保護の推進
●防犯活動などの推進
●独居老人などに対する保護活動の推進
●相談活動の推進

最近の活動事例
●「喜の国201(ふれあい)作戦」と称して毎月20日を独居老人宅への巡回連絡の強化日と指定して、個別の防犯指導などを実施。(和歌山)

●交番の警察官が独居老人宅を訪問し、体調や普段の生活、近所との付き合いなどを聞き取り、必要に応じ、離れて暮らす身内へ近況を連絡。(三重)


※孤立死の共通点「ケアを受けたくない」 -厚労省会議(2)へつづきます。