ITも見守る 都など続々実験 高齢者ら関心高く
2007年05月26日 東京新聞
高齢者らがだれにも見守られずに亡くなり、放置される孤独死を防ごうと、情報技術(IT)を使った新たな見守りシステムの実用化に向けた取り組みが広がり始めた。
総務省は2月、腕時計型センサーを使って24時間体制で体調を把握する実験を行い、東京都水道局は3月、全国で初めて水道使用量から異変を察知する実験を開始。
専門家からは「機械任せにするとかえって孤立するのでは」との声も聞かれるが、都の実験では募集枠を大幅に超える応募があり、高齢者の関心の高さをうかがわせる。 (大村歩)
総務省北海道総合通信局は昨年12月から今年3月まで、深川市内の有料老人ホームで暮らす67-80歳の計七人に腕時計型センサーをはめてもらい、脈拍や体温、動作などのデータを無線通信で収集した。その結果、脈拍測定に支障が出たが、利用者から「見守ってもらっているという安心感がある」「寝たきりになったら必要不可欠なシステム」と好意的な反応が寄せられた。
同ホームの蓑口亮施設長は「施設でも夜間は手薄になり、人間による見守りには限界がある。人手が足りない部分でうまく活用できれば効果は大きい」と話す。
一方、東京都水道局は3月、23区内に居住する高齢者らの自宅の水道メーターに無線装置を取り付け、家族らに水道使用量を知らせるシステムの試験を始めた。
毎日の水道使用量が1時間ごとのグラフになって送られ、生活習慣の把握もできる。東京ガスなどは既にガス使用量を検知して見守りに役立てるサービスを始めているが、水道では全国初の試み。
水道局サービス推進部は「トイレ、炊事、洗濯などの水道使用量が分かれば、異変を早く察知できる」としており、100件の募集枠に対し180件の応募があった。8割以上が独り暮らしの高齢者とその家族との組み合わせだった。
まだ異変を察知した報告はないが、同部は今後、利用者へのアンケートから普及に向けて課題を探るという。
こうしたITによる見守りについて、地域福祉に詳しい武蔵野大の川村匡由教授は「家族や地域の負担軽減のためなら意味がある。ただ高齢者福祉は人と人とのコミュニケーションが最も大事。センサーに安否確認を任せて人による見守りを減らす、となったら本末転倒だ」と指摘している。